基調講演

渡辺 桂吾 先生(岡山大学大学院自然科学研究科 産業創成工学専攻 教授)

講演題目:「非ホロノミックな移動ロボットの計測と制御:陸海空でのいくつかの研究事例」

講演概要:
 本講演では,我々の研究室で研究されている最近の幾つかの無人移動体(あるいはロボット)について概観する.特に,2輪独立駆動型移動ロボット車や自動車型4輪移動ロボットなどの無人地上車,4つのロータを有するクワッドロータや小型飛行船への応用としてのX4ブリンプなどの無人航空機,ならびにX4ロータ技術を水中移動体に応用したX4-AUVや鰭を推進機構とするマンタ型ロボットなどを計測と制御の観点から紹介する.
 まず,非ホロノミックな4輪移動ロボット車の画像に基づくファジィ制御を用いた障害物回避を紹介する.ただし,移動環境のポテンシャル情報の利用下で,カメラ画像上で抽出される移動可能領域内での目標追従線に沿うようなファジィルールを設計する.また,その自動駐車システムや人追従システムへの応用についても述べる.
 次に,4つのロータを持つVTOL機であるクワッドロータの計測と制御について紹介する.特に,ここでは最も基本的なジョイスティックによる制御ではなく,橋梁やトンネルなどのインフラ点検への応用を意識したテザーを用いた位置制御法について述べる.また,いわゆる4つのロータによる推力発生機構(または,X4推進機構)の応用として,ラダーを用いない小型飛行船「X4ブリンプ」の製作例を示す.
 さらに,X4推進機構の水中移動体への応用として,小型自律水中移動体(AUV)の製作例を紹介する.また,プロペラ型推進機構はエネルギ効率は良いものの,生物の生息する水中環境下ではプロペラによるノイズ発生や生態系へのダメージなどにより,生態観測等には別の推進機構を用いたAUVの開発が望まれる.そこで,いわゆるバイオニックスラスタの1つとして,胸鰭推進機構による水中ロボットがアジアを中心に盛んに研究されているが,ここでは鰭形状と胴体形状を考慮して当研究室で最近設計・製作したマンタ型ロボットについて述べる.