基調講演

長谷川 勉 先生(熊本高等専門学校 校長,九州大学 名誉教授)

講演題目:生活支援ロボットの実現に向けて − 環境情報構造化 −

講演概要:

 生活環境で身近な軽作業を実行できるロボットは、人類の夢の1つと言ってよい。しかし、単体のロボットに搭載できるセンサ機能や情報処理機能には限りがあり、多様な建物構造、そこに配置される膨大な物品類、ダイナミックな変化などの特性を有する生活環境で、状況を認識し、的確迅速に作業を行うことは極めて難しい。我々は、ネットワークで結ばれた多種多様で多数のセンサと巨大なデータベースを環境内に配置し、ロボットの行動を支援するアプローチを提唱し、生活支援ロボットの実現を目指してきた。研究開発は、科研費や「ロボットタウンの実証的研究(H17-19)」(総合科学技術会議連携施策群による採択、科学技術振興調整費)、「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト・作業知能(社会・生活分野)(H19-H23)」(NEDO)などの支援を受けて進めた。主たる成果は下記の文献リストを参照されたい。 環境情報構造化は、最近のセンサネットワーク、IoT、ビッグデータ、AIなどとも関連するものであり、九州大学のCOIプロジェクト中で、「ヒト/モノ/ロボット共生快適生活空間」(H25-H33)として展開発展が進められている。本講演では、これまでの成果のいくつかを紹介し、新たな展開について概観する。


文献:
[1] Ryo Kurazume, Yumi Iwashita, Koji Murakami, Tsutomu Hasegawa, Introduction to the Robot Town Project and 3-D Co-operative Geometrical Modeling Using Multiple Robots, Springer Tracts in Advanced Robotics, 2017
http://www.springer.com/gp/book/9783319293622
[2] Tokuo Tsuji, Oscar Martinez Mozos, Hyunuk Chae, YoonSeok Pyo, Kazuya Kusaka, Tsutomu Hasegawa, Ken'ichi Morooka and Ryo Kurazume, The Informationally Structured Room for Robotic Assistancey, Sensors, Vol. 15, No. 4, pp.9438-9465, 2015
[3] Yoonseok Pyo, Tsutomu Hasegawa, Tokuo Tsuji, Ryo Kurazume and Ken'ichi Morooka, Floor Sensing System Using Laser Reflectivity for Localizing Everyday Objects and Robot, Sensors, Vol.14, No.4, pp.7524-7540, 2014
[4] 鄭 龍振, 倉爪 亮, 岩下 友美, 長谷川 勉, 大規模な3次元環境地図とRGB-Dカメラを用いた移動ロボットの広域位置同定, 日本ロボット学会誌, Vol.31, No.10, pp.896-906, 2013
[5] Oscar Martinez Mozos, Hitoshi Mizutani, Ryo Kurazume, Tsutomu Hasegawa, Categorization of Indoor Places Using the Kinect Sensor, Sensors, Vol.12, No.5, pp.6695-6711, (2012.6)
[6] 長谷川勉、人間共生広域環境の情報構造化、計測と制御, Vol.59, No.6, pp.361-366, 2010
[7] 長谷川勉, 野原康伸, 村上剛司、生活環境における日用品情報構造化のための床面センシングシステム, 日本ロボット学会誌, Vol.28, No.9, pp.1144-1147, 2010
[8] 家永貴史,千田陽介,有田大作,木室義彦,長谷川勉ほか、病院環境の情報構造化による車いすロボットサービスとその評価、日本ロボット学会誌, Vol. 27, No. 8, pp. 877-884, 2009
[9] 長谷川勉、環境プラットフォーム「ロボットタウン」 日本ロボット学会誌, Vol. 26, No. 5, pp. 411-414, 2008
[10] 村上剛司,長谷川勉ほか,情報構造化環境における情報管理の一手法、 日本ロボット学会誌, Vol. 26, No. 2, pp. 192-199, 2008
[11] 長谷川勉、ロボット作業環境の情報構造化、電子情報通信学会会誌, Vol. 91, No. 5, pp. 417-423, May 2008
[12] 倉爪亮,戸畑享大,村上剛司,長谷川勉, CPS-SLAMの研究 大規模建造物の高精度3次元幾何形状レーザ計測システム, 日本ロボット学会誌, Vol. 25, No. 8, pp. 90-98, 2007
[13] Tsutomu Hasegawa, and Kouji Muarkami, Robot Town Project: Supporting Robots in an Environment with Its Structured Information, Proc. of The 3rd International Conference on Ubiquitous Robots and Ambient Intelligence, pp. 119-123, Seoul, Korea, Oct. 2006