基調講演
山田 耕一 先生(長岡技術科学大学 教授)
講演題目: 真偽に関する認知的不確実性の合成
講演概要:
日常生活において,いくつかの不確実な情報を勘案して総合的に判断をすることは,思いのほか多い.久しぶりの休日にどの映画を見るか,なけなしの金をどの馬に賭けるか,書こうとしている論文をどの学会に投稿するかなど,意思決定というほどでもない意思決定をするときには,様々な不確実な情報を集め,総合的に判断するしかない.そのような判断を推論と呼ぶのであれば,不確実情報の統合あるいは合成は,不確実性な情報に関する重要な推論の一つと考えてよいだろう.
そうした問題を最初に扱ったのは,私の知る範囲内では,デンプスター・シェーファー理論のDempster合成であり,有名なエキスパートシステムであるMYCINで使われた確信度合成である.その後,Dubois & Pradeは,不確実性表現の一つである可能性分布に関する合成方法を議論・提案した.
本講演では,これらの不確実性を生みだす情報源モデルに着目し,講演者が提案した真偽の可能性に関する情報源モデルを説明し,それに基づく可能性分布の合成方法を紹介する.その後,MYCINで用いられた確信度を,提案時に用いられた確率論ではなく,可能性分布の別表現として解釈し,その新たな解釈に基づく確信度の合成方法をいくつか提案する,また,それらの合成の数学的性質および数値実験結果について考察する.